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2.1 開発環境とコンパイラ

C言語でプログラミングをするために必要なツールの構成と開発環境について紹介します。

2.1.1 プログラミングに必要なもの

どんな作業にも、必ず必要な道具というものがあります。漫画を描くには原稿用紙やインク、ペン、定規、鉛筆と消しゴム、スクリーントーンなどが必要だし、音楽を奏でるには楽器のほかにも楽譜や譜面台、練習用にチューナーやメトロノームなども必要になるでしょう。プログラミングも同様で、ただコンピュータがあれば作ることができるものではありません。効率的に良質なプログラムを生産するには、高度な開発環境が必要です。開発環境とは、プログラムを作るためのプログラムです。プログラムのミスを探すデバッガや、プログラムを書くためのエディタ、開発工程を自動化してくれる CASE ツールなどがあります。これらの開発環境もプログラムによって作られているので、その気になれば自分で作ってしまうことも不可能ではありませんが、そのようなことができる技術があるのであれば、この本を手に取ったりすることはないでしょう。そこで、この場では簡単に C 言語による開発に必要なものを紹介します。

C 言語は、原始プログラムを目的プログラムに翻訳して、その後に実行可能な形式にまとめてから実行する手法を用います。 このように、原始プログラムを目的プログラムに変換する作業のことをコンパイルと呼びます。 原始プログラムを目的プログラムに変換するソフトウェアのことをコンパイラと呼び、C 言語で記述されたソースを実行するにはコンパイラが必要になります。 C 言語の開発手順は、テキストエディタで原始プログラムを記述し、コンパイラを用いてこれを目的プログラムに変換します。そして、最後にリンカと呼ばれるソフトウェアを使って必要な目的プログラムを結合させ、実行可能ファイルを生成します。 多くの場合、リンカなどの実行可能ファイル形式を作成するために必要なツールはコンパイラに付属しています。

図1 プログラム作成の流れ
プログラムの流れ

コンパイラの入手方法は様々ですが、もしあなたが Microsoft Windows ユーザーで、コンピュータ初心者であれば Microsoft Visual C++ という統合開発環境を推奨します。これらの開発環境はグラフィカルにソフトウェアを開発することができ、必要なエディタやコンパイラ、ドキュメントなどがそろっています。C 言語プログラムを記述して、ボタンを押すだけでコンパイル、リンキング、実行を行うことができるため、初心者も扱いやすく、本格的な開発にも向いています。

ネット上で無償提供されているフリーコンパイラも存在します。例えば、Embarcadero 社が提供する Borland C++ Compiler などが使えます。Borland C++ Compiler は、個人の開発や学習を目的に公開されているコンパイラですが、無保証であるというだけで制限は設けられていません。ただし、Borland C++ Compiler は統合開発環境ではないため、コマンドラインが扱えなければいけません。

テキストエディタで記述した C 言語プログラムをどのようにコンパイルし、実行するかはコンパイラによって異なります。通常、C 言語のソースファイルは .C という拡張子を持ちます。また、C 言語を発展させたオブジェクト指向言語である C++ 言語の拡張子は .CPP となります。

Microsoft Visual C++ や Borland C++ Compiler などは C++ コンパイラですが、C++ 言語は C 言語と互換性があるため C++ コンパイラでも C 言語をコンパイルすることができます。C++ コンパイラで C 言語をコンパイルするには、必ず拡張子を .C にしなければなりません。.CPP としてコンパイルすると、コンパイラは C++ 言語としてコンパイルするため、場合によってはエラーが出てしまいます。コンパイラによっては拡張子に関係なく、コンパイラオプションで設定できるものもあるかもしれませんが、詳しくはコンパイラ付属のドキュメントを参照してください。