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1.1 はじめに

本書「Windows Presentation Foundation プログラミング入門」について。

1.1.1 本書について

2007 年は、Windows Vista を始め、多くの新しい技術や製品が登場する予定のエキサイティングな 1 年間になりそうです。本書では、Windows Vista と共に投入された Microsoft .NET Framework 3.0 の WPF について解説させていただきます。この魅力的な新技術を、こうして皆様にご紹介させていただく機会を与えていただき、とても光栄です。

WPF は、XAML と呼ばれる XML ベースの言語と組み合わせることによって高度なグラフィックス技術を容易に実現することができます。そのため、Web などで公開されているサンプルや入門文書の多くが、WPF の内部構造ではなく XAML の解説を中心としていました。本書では、こうしたデザイン中心の解説ではなく、技術的な原理である WPF のクラス構造を徹底的に解説し、XAML は WPF の一部のクラスライブラリで実現するツールという位置づけにしています。

本書では、Windows の主要な開発環境である Visual Studio や、WPF の GUI デザインの主要なツールとなるであろう新製品 Expression には触れません。執筆時点で、これらの製品がリリース前であるというのが理由の 1 つです。.NET Framework 3.0 を完全にサポートする Visual Studio 2007 と、ユーザーインタフェースのデザインを専門とするデザインツール Expression Blend は、執筆時点ではベータ版でした。

また、これらの開発環境は Microsoft の製品であって技術ではありません。本書の目的は WPF という技術を解説することです。そのため、製品に依存した解説は極力避けるべきだと考えました。サンプルコードのコンパイルや実行に必要とする開発環境は、.NET Framework 2.0 SDK と .NET Framework 3.0 ランタイムのみです。Windows Vista では .NET Framework 3.0 が既にインストールされているため、SDK さえインストールすればすぐに開発を試せます。

MSDN などで公開されている WPF の派手なサンプルは、リッチな演出や 3D グラフィックスを使ったアプリケーションが並んでいますが、どうか安心してください。メモ帳だけでコードを書いて WPF アプリケーションを開発することができますし、XAML を使わずに C# のような純粋なプログラミング言語だけでも GUI を定義することができます。いつの時代も、プログラミングの本質を学ぶにはテキストエディタとコマンドツールが適しています。本書も、歴史あるこの開発スタイルに従います。

この文章は、実は全ての原稿を完成させた後に書いています。 書き始める前に想像していたよりも文章量が多くなってしまったのですが、まだまだ書き足りないほど WPF のボリュームは大きいものでした。その中から、皆様が WPF の世界に足を踏み入れ、どのようにすれば WPF 対応のアプリケーションを開発することができるのかをご理解いただくために必要な技術を厳選して解説しております。

WPF は、Windows Vista と共に登場した .NET Framwork 3.0 の一部です。これらは Vista 世代の技術と言えますが、Windows XP でも 開発・実行することは可能です。おそらく、本書が発売した直後は、まだ Windows Vista よりも Windows XP を利用している方のほうが多いと思いますが、Windows XP ユーザーの方でも、本書で Vista 世代のアプリケーション開発を学習していただくことができます。

最後に、本書を手に取っていただき、本当にありがとうございます。本書を、皆様の開発の役に立てていただければ幸いです。