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1.4 開発環境と準備

.NET Framework 3.0 のインストールと、.NET Framework SDK を用いた WPF アプリケーションのコンパイル方法の紹介です。

1.4.1 .NET Framework SDK

WPF は .NET Framework 3.0 のクラスライブラリの一部なので、.NET Framework 3.0 の実行環境が必須となります。.NET Framework 3.0 は Windows Vista 以降であれば標準でインストールされていますが、Windows XP や Windows Server 2003 の場合は、明示的にインストールしなければなりません。.NET Framework の詳細やダウンロードについては、以下の Microsoft のページを参照してください。

Microsoft のアナウンスでは、.NET Framework 3.0  アプリケーションの開発ためには Visual Studio 2005、Windows SDK、そして Visual Studio 2005 Extensions のインストールが必要だとしています。しかし、これは真実ではありません。.NET Framework 3.0 は、.NET Framework 2.0 に WPF を含むいくつかのクラスライブラリを追加しただけにすぎません。理屈では、.NET Framework 2.0 の開発環境に、追加されたクラスライブラリへのリンクを追加するだけで開発することは可能です。

もちろん、Visual Studio のような統合開発環境や Windows SDK は .NET Framework 3.0 の開発環境として重要なツールですが必須ではありません。本書のサンプルは全て、.NET Framework 2.0 SDK に付属の C# コンパイラのみを使って実行ファイルを生成、テストを行っています。

.NET Framework 2.0 SDK は、以下のページからダウンロードすることができます。

.NET Framework 2.0 SDK には、C# や C++、Visual Basic .NET などのコンパイラや各種ツールが含まれています。既定のインストール設定で、次のフォルダにインストールされます。

  • C:\Windows\Microsoft.NET\Framework\v2.0.50727

実行環境やインストール時の設定によっては、ドライブ文字やパスが異なる可能性があります。注意してください。例えば、C# 言語用のコンパイラは csc.exe ファイルです。コマンドプロンプトから頻繁に利用する場合、上記のインストールしたフォルダのパスを環境変数に追加してください。

.NET Framework 2.0 標準のクラスライブラリ以外を利用する場合、クラスが格納されている DLL ファイルへの参照をコンパイラに指定しなければなりません。DLL ファイルの参照を追加するには /r コマンドを使います。

/r:ファイルパス

ファイルパスには、参照する DLL ファイルを指定します。WPF アプリケーションを開発する場合、少なくとも WindowsBase.dll、PresentationCore.dll、PresentationFramework.dll の 3 つのファイルを追加する必要があります。これらのファイルは、既定のインストールでは以下のフォルダに格納されています。

  • C:\Program Files\Reference Assemblies\Microsoft\Framework\v3.0

この他に、WPF 以外の .NET Framework 3.0 で追加された機能を利用する場合、使用する型が含まれている DLL ファイル名をドキュメントから調べて追加してください。

コマンドプロンプトから C# 言語のファイルをコンパイルする場合は、例えば以下のように /r オプションを指定します。

csc /r:DLLファイル ソースファイルのパス

/r オプションは任意の数だけ指定することができます。参照する DLL ファイルが複数ある場合、そのファイルの数だけ /r コマンドを指定します。しかし、コンパイルする度に /r オプションを設定するのは非常に大変です。そこで、csc.exe と同じフォルダにある csc.rsp という設定ファイルに、コンパイル時に既定で参照する DLL ファイルを追加することができます。 以下のように書き換えてください。

コード1 csc.rsp
# This file contains command-line options that the C#
# command line compiler (CSC) will process as part
# of every compilation, unless the "/noconfig" option
# is specified. 

# Reference the common Framework libraries
/r:Accessibility.dll
/r:Microsoft.Vsa.dll
/r:System.Configuration.dll
/r:System.Configuration.Install.dll
/r:System.Data.dll
/r:System.Data.OracleClient.dll
/r:System.Data.SqlXml.dll
/r:System.Deployment.dll
/r:System.Design.dll
/r:System.DirectoryServices.dll
/r:System.dll
/r:System.Drawing.Design.dll
/r:System.Drawing.dll
/r:System.EnterpriseServices.dll
/r:System.Management.dll
/r:System.Messaging.dll
/r:System.Runtime.Remoting.dll
/r:System.Runtime.Serialization.Formatters.Soap.dll
/r:System.Security.dll
/r:System.ServiceProcess.dll
/r:System.Transactions.dll
/r:System.Web.dll
/r:System.Web.Mobile.dll
/r:System.Web.RegularExpressions.dll
/r:System.Web.Services.dll
/r:System.Windows.Forms.Dll
/r:System.Xml.dll

/r:"C:\Program Files\Reference Assemblies\Microsoft\Framework\v3.0\WindowsBase.dll"
/r:"C:\Program Files\Reference Assemblies\Microsoft\Framework\v3.0\PresentationCore.dll"
/r:"C:\Program Files\Reference Assemblies\Microsoft\Framework\v3.0\PresentationFramework.dll"

下部の 3 行が追加した .NET Framework 3.0 のための /r オプションです。ドライブ文字や DLL のパスは環境に合わせてください。これを保存して、コマンドプロンプトからコード1をコンパイルすることができれば成功です。